喪中 [雑感]
おじいちゃん。
祖父がその脈を止めたのは、5日の早朝のことでした。
享年93。
大好きなおじいちゃんが、体躯から魂だけ空へと抜けた。
6日、福岡から新潟へは1日1便しかないその飛行機に、母と父と兄と搭乗して、着いたころには、もうおじいちゃんは冷たかった。本当に冷たかった。
ドライアイスに囲まれて、細胞の劣化を少しでも遅らせるようにと時間に抗う中に、横たわってた。
9月に触れたときには、あんなに温かかったのに…なんでこんなに冷たいのか、素直に受け止められなかった。触れたいのに冷たくて触れるのが怖い。冷たいから触れるのが怖いんじゃなくて、死ぬことが冷たくなることだということを認めるのが怖かった。
今思えばそんな気がする。
わっと大声を出せば目を覚ましてくれるんじゃないか、ちょっと揺さぶったら、んー?と振り向いてくれるんじゃないだろうか、そんなことばかり思った。
初めて、大好きな人がいなくなる、亡くなることを身近に覚えた。
佐渡では九州と違って、通夜の前に散り焼きを行うらしい。
散り焼き、は火葬のこと。
冷たくなった身体を親族、友人らに拭われて、棺に納められる。
おじいちゃんが愛したもの、大事なものを棺に納める。
おじいちゃん宛の最後の手紙も入れさせてもらった。
棺の上下左右を釘で固定していく。
ハコに詰められて、もう抜け出せないようにされていく様を見て、苦しかった。
そんな狭いところに入れないでよ、閉じ込めないでほしかった。
出棺して、火葬。
高温の炉にくべられて、あっという間の2時間。
空が雲ひとつない、秋晴れだったことだけが素直にうれしかった。
きっと迷わず空へいけるね、ぼんやり思った。
炉から出されたおじいちゃんの遺骨。
ところどころがカラフルで、どれだけ薬を投与されていたのかを感じさせられた。
赤く、ピンク、緑ですら混ざっている骨もあった。
箸で骨を拾い上げていく。
あんなに大きかったおじいちゃんが、35cm角の箱に収められる。
おじいちゃんの骨、大小全てをすくい上げて、箱に詰めた。
またそんな狭いところに閉じ込めるのか。
お通夜の会場でも、本葬の会場でも、唱えられた経文は意味がわからない。
おじいちゃんが迷わないように唱えているのか、目的はなんだろう。
何て言ってるんだろう。よくわからない。
おじいちゃんが少しでも楽になれるように紡ぐ言葉なんだろうか。
違う世界の言葉なんだとしみじみ思った。寂しかった。
でも酷薄なことに、遺体が遺骨になって、もう見えない箱の中に収められた瞬間、触れられなくなった途端に、感情が抜け落ちた気がした。
悲しいのも寂しいのもわからなくなって、ただ、居なくなったことがぽっかり心に穴を開けた気がした。
同時に、人はこうやって感情を忘れてしまうのかなと思った。
おじいちゃんからの手紙はもう来ない。
おじいちゃんからの年賀状ももう来ない。
今までもらった手紙、とってある。読み返しては、もう逢えないことを実感して涙が出る。
半年前はまだ字も書けたのに、どうして今はもう居ないんだろう。
おじいちゃん、アタシの字はおじいちゃんに似てるってね、言われたんだよ。
おじいちゃんの字に似てるって。うれしかった。
最後の手紙は届きましたか。
ごめんね、ばかりの手紙になった、へたれたわけのわからない手紙を読んで、おじいちゃんはどう思ってるのかなぁ。
今はもう返事はもらえないけど、いつか同じ世界で過ごすときがきたら、そのときは教えてほしい。
それからおじいちゃんのことをいっぱい教えてほしい。
アタシ、おじいちゃんのこと、実は何も知らなかったんだなぁって気づいたんだ。
知ってるふりして満足してたみたい。
本当にごめんなさい。
おじいちゃんへ。
少しは楽に過ごせていますか。
懐かしい人に再会できましたか?
寂しい世界でないことを願っています。
病気と闘い続けた身体を、今は少し休めて、空を自由に漂ってのんびり過ごしてほしいなぁと思います。
アタシはまだ逢いにいけないけど、いつかまた逢えたらそのときはしたことがないことをいっぱいしよう。
一緒に手をつないで散歩しよう。一緒に釣りにも行こう。一緒に書道を楽しもう。一緒に色んな話をしよう。
色々と間に合わなくてごめんなさい。
今更後悔しても遅いけど、悔やんでいます。
おじいちゃん、だいすきだよ。
ずーっとだいすきだ。
おじいちゃんの孫で、おじいちゃんの娘がお母さんで、お父さんが居て兄貴がいて、今ここに在ること、本当にありがとう。
今はゆっくり休んでね。
おじいちゃん、おやすみなさい。
祖父がその脈を止めたのは、5日の早朝のことでした。
享年93。
大好きなおじいちゃんが、体躯から魂だけ空へと抜けた。
6日、福岡から新潟へは1日1便しかないその飛行機に、母と父と兄と搭乗して、着いたころには、もうおじいちゃんは冷たかった。本当に冷たかった。
ドライアイスに囲まれて、細胞の劣化を少しでも遅らせるようにと時間に抗う中に、横たわってた。
9月に触れたときには、あんなに温かかったのに…なんでこんなに冷たいのか、素直に受け止められなかった。触れたいのに冷たくて触れるのが怖い。冷たいから触れるのが怖いんじゃなくて、死ぬことが冷たくなることだということを認めるのが怖かった。
今思えばそんな気がする。
わっと大声を出せば目を覚ましてくれるんじゃないか、ちょっと揺さぶったら、んー?と振り向いてくれるんじゃないだろうか、そんなことばかり思った。
初めて、大好きな人がいなくなる、亡くなることを身近に覚えた。
佐渡では九州と違って、通夜の前に散り焼きを行うらしい。
散り焼き、は火葬のこと。
冷たくなった身体を親族、友人らに拭われて、棺に納められる。
おじいちゃんが愛したもの、大事なものを棺に納める。
おじいちゃん宛の最後の手紙も入れさせてもらった。
棺の上下左右を釘で固定していく。
ハコに詰められて、もう抜け出せないようにされていく様を見て、苦しかった。
そんな狭いところに入れないでよ、閉じ込めないでほしかった。
出棺して、火葬。
高温の炉にくべられて、あっという間の2時間。
空が雲ひとつない、秋晴れだったことだけが素直にうれしかった。
きっと迷わず空へいけるね、ぼんやり思った。
炉から出されたおじいちゃんの遺骨。
ところどころがカラフルで、どれだけ薬を投与されていたのかを感じさせられた。
赤く、ピンク、緑ですら混ざっている骨もあった。
箸で骨を拾い上げていく。
あんなに大きかったおじいちゃんが、35cm角の箱に収められる。
おじいちゃんの骨、大小全てをすくい上げて、箱に詰めた。
またそんな狭いところに閉じ込めるのか。
お通夜の会場でも、本葬の会場でも、唱えられた経文は意味がわからない。
おじいちゃんが迷わないように唱えているのか、目的はなんだろう。
何て言ってるんだろう。よくわからない。
おじいちゃんが少しでも楽になれるように紡ぐ言葉なんだろうか。
違う世界の言葉なんだとしみじみ思った。寂しかった。
でも酷薄なことに、遺体が遺骨になって、もう見えない箱の中に収められた瞬間、触れられなくなった途端に、感情が抜け落ちた気がした。
悲しいのも寂しいのもわからなくなって、ただ、居なくなったことがぽっかり心に穴を開けた気がした。
同時に、人はこうやって感情を忘れてしまうのかなと思った。
おじいちゃんからの手紙はもう来ない。
おじいちゃんからの年賀状ももう来ない。
今までもらった手紙、とってある。読み返しては、もう逢えないことを実感して涙が出る。
半年前はまだ字も書けたのに、どうして今はもう居ないんだろう。
おじいちゃん、アタシの字はおじいちゃんに似てるってね、言われたんだよ。
おじいちゃんの字に似てるって。うれしかった。
最後の手紙は届きましたか。
ごめんね、ばかりの手紙になった、へたれたわけのわからない手紙を読んで、おじいちゃんはどう思ってるのかなぁ。
今はもう返事はもらえないけど、いつか同じ世界で過ごすときがきたら、そのときは教えてほしい。
それからおじいちゃんのことをいっぱい教えてほしい。
アタシ、おじいちゃんのこと、実は何も知らなかったんだなぁって気づいたんだ。
知ってるふりして満足してたみたい。
本当にごめんなさい。
おじいちゃんへ。
少しは楽に過ごせていますか。
懐かしい人に再会できましたか?
寂しい世界でないことを願っています。
病気と闘い続けた身体を、今は少し休めて、空を自由に漂ってのんびり過ごしてほしいなぁと思います。
アタシはまだ逢いにいけないけど、いつかまた逢えたらそのときはしたことがないことをいっぱいしよう。
一緒に手をつないで散歩しよう。一緒に釣りにも行こう。一緒に書道を楽しもう。一緒に色んな話をしよう。
色々と間に合わなくてごめんなさい。
今更後悔しても遅いけど、悔やんでいます。
おじいちゃん、だいすきだよ。
ずーっとだいすきだ。
おじいちゃんの孫で、おじいちゃんの娘がお母さんで、お父さんが居て兄貴がいて、今ここに在ること、本当にありがとう。
今はゆっくり休んでね。
おじいちゃん、おやすみなさい。
2009-11-10 23:06
nice!(0)