ざわり

　
　いつも、思うんだけどね。
　いつもは、結構仕舞ってるんだけどね。
　なんでか、たまに、すっごく、ざわついたりしちゃうんだな。

　自分が嫌いだと思っている相手と自分が好きだと思う相手が、楽しそうに共有している様は、あまりに戴けない。
　
　このあたりが、ざわつくのです。
　なんでだろう。
　たとえばどれだけ嫌いな人間が居て、たとえばどれだけにも好きな人間が居て、でもそこへ向かう感情のベクトルはあくまで自分だけのものであって、自分以外には強制力もなにもないんだと思うのに。
　嫉妬？
　ちがう。
　独占欲。
　それはあくまで、エゴイスティックでみっともないほどに純粋な。
　だから、ざわつく。
　でもいつもは、見ないふりをして、仕舞っておけるのに。
　なぜだか今日は、とてもよく、ざわついた。
　
　彼に笑いかけないでよ、その笑顔はアタシだけのもの。
　彼女に言葉をかけないでよ、その音はアタシだけのもの。
　
　男も女も関係なく、あくまでアタシの好きな人と嫌いな人という分別。
　まるでこどもが気に入ったおもちゃを手放さないように。
　他人が欲しがれば欲しがるほどに固持して。
　他人が興味を持たなくなれば、厭いて躊躇わず手放すように。
　
　本音はそう。
　アタシの好きな人は気に入らないで。
　アタシの嫌いな人は一緒に嫌って。
　
　結局は、アタシだけが君の真ん中にあればいい。
　嫉妬深い？
　ちがう。
　独占欲の塊で束縛したいだけ。
　
　そのふたつの目が映すものは、アタシだけでいい。
　有機物のアタシと、その他は無機質モザイクでいいじゃない。
　アタシが飽きるまで、そうしていてよ。
　アタシが飽きたなら、わざとそうして気を惹いてよ。

　最高に最低で、とんでもなくわがまま、と思い直した日。
　
　いつもは、ちゃんと、仕舞ってくんだけどね。
　今日は、本当に、とてもざわついた。

　猫は、いつだって、気まぐれ。